K-Popと日本企業4
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最後に標題に戻って、韓国の音楽事情と日本の音楽事情を比較検討したいと思います。
韓国の人口は約5,000万人で日本の半分以下です。しかも、前述のように著作権に関する規制が緩く、インターネットを通じての音楽ダウンロードが普及しているので、CDの売り上げはあまり期待できません。
この様に国内市場だけでは売り上げ増は望めませんので、必然的に海外の音楽市場を目指していくことになります。
特に、市場規模の大きい日本、中国、米国への進出を目指しているようです。
これはK-Popのグループの育成方針に端的に表れております。K-Popのメンバーは、12~3歳頃から研修生として募集され、合宿生活をしながら、音楽やダンスだけでなく、語学や一般教養も含めて3~5年間徹底した教育を受けたのち初めて歌手デビューするようです。
従って、歌唱力があってダンスが上手なのは勿論で、ある程度の外国語を話せます。
Miss Aのように中国人が含まれているグループや、在米韓国人2世や在カナダ韓国人2世のようなメンバーが含まれているグループもあり、今後の海外での売り出しを狙っているものと思います。
また、前述のように、インターネットにPVやMVをuploadすることにより、アジアだけでなく欧米に最新のK-PopをPRしております。
最近最もヒットしたPV、PSY(サイ)の「カンナムスタイル」は全世界でのヒット数が1億回を超えたそうで、K-Popが世界に浸透しつつあるようです。
Miss Aの「Touch」 左端のJiaと右から2番目のFeiが中国人です。 |
PSY(サイ)のカンナムスタイルのPVの一場面 You Tubeでのアクセス回数が1億回を超えたそうです。 |
これに対して日本の音楽事情はまったく正反対です。
人口が1億2,000万人で、音楽ダウンロードもまだ普及が遅れており、市場が縮小しつつあると言っても大きなCD市場が依然残っています。
更に、CDの価格が韓国では1枚15,000ウオン(約1,000円)程度なのに対し、日本はほぼ3,000円と3倍も高価です。
このため、敢て海外を目指す必要はなく、一部の歌手を除いては海外を目指す歌手やグループは皆無です。
また、AKB48のように、歌唱力やダンスが必ずしも上手でない素人っぽいグループが人気があります。
これは、あまりに上手なプロ歌手より身近に感じられるからかもしれませんが、ダンスが上手で歌唱力のあるK-Popのグループが日本で人気があるのもうなずける気がします。
今後もK-Popのグループが日本で活躍するようになるのではないかと思います。
同じような状況が、韓国と日本の電機業界にも見られます。
国内市場規模が限られている韓国では、TVや携帯電話のような電気製品を開発する際、最初から世界市場を視野に入れたユニバーサルな製品開発を行っており、同じものを国内でも販売する戦略です。
これに対し、日本は国内市場が大きく、まずは国内市場に合わせた製品を開発しております。
日本の消費者のTVや携帯電話に対する要求レベルは非常に高いため、メーカーは日本人の好みに合わせた特殊な仕様の製品(所謂ガラパゴス携帯等)を開発せざるを得ません。
さらに、国内には電機メーカーが10社近くひしめいており、国内の生存競争に疲弊してとても海外戦略を立てる余裕がないというのが実情のようです。
これでは、サムソンとLGの二大メーカーに集約された韓国メーカーに勝てるわけがありません。
日本の電機メーカーが今後も生き残っていくためには、メーカーがもう少し集約されて規模を大きくし、日本市場にとらわれないユニバーサルな製品開発を行わないと韓国メーカーに太刀打ちできないように思います。
所が、日本の電機メーカーが生き残るヒントになるのではないかと思われる出来事が昨年ありました。
ご存知の方もおられるかもしれませんが、昨年後半由紀さおりの「1969」と言うジャズアルバムが日本だけでなく欧米で大ヒットしました。
年輩の方はご存知かもしれませんが、由紀さおりが1969年にヒットさせた「夜明けのスキャット」と言う曲や、同年にヒットした日本の歌謡曲「ブルーライト・ヨコハマ」、「夕月」、ボサノバ「マシュケナダ」等をジャズ風にアレンジしたものです。
特筆すべきは1曲を除きすべて日本語で歌っていることです。
日本語で歌う「マシュケナダ」は中々聴きものです。
12曲が含まれたこのアルバムは、iTunes Storeで1,500円です。
これを読んで興味をもたれた方はぜひ購入してみてください。
この日本人が日本語で歌うジャズアルバムが、なんと米国とカナダのiTunesのジャズ・チャートで1位を獲得したのです。
日本人のジャズ歌手としては、笠井紀美子や伊藤君子等が有名(少し古いですが)で、日本ではそこそこCDも売れたかもしれませんが、世界で売れたという話は聞いたことがありません。
共演したピンク・マルティーニのおかげということも多少あるかもしれませんが、由紀さおりの美しい歌声と欧米人にとって異国的な日本語の歌詞が受けたのかも知れません。
これは、本当に良いものは多少異質でも世界で受け入れられる証かもしれません。
日本の電機業界も、本当に良い製品を開発すればたとえガラパゴスと言われようが、世界で受け入れられるのではないかと思います。
どうやら、パナソニックや日立は、洗濯機や冷蔵庫のような白物家電でユーザーの利便性を考えた高機能な製品(従って、高価な製品)を売り出し始めたようで、世界で大きなセアーを獲得するには至らないかもしれませんが、韓国のメーカーに抗して日本のメーカーが生き残れる道かもしれません。
由紀さおりとピンク・マルティニのアルバム「1969 」 |
iTunes Storeの「1969」 12曲で1,500円です。 |
K-Popの話は今回で終了し、次回から韓国のジャズ歌手Woong San(雄山)について書きます。
ご期待ください。